新潟県水泳連盟 Niigata Swimming Federation

 水泳の指導者 林 利八

『水泳にいがた』2002 vol.7掲載文全編収録

(1)指導者養成事業 (2)本県の指導者養成 (3)本県の水泳指導者数 
(4)指導者の利用と活用 (5)指導者と競技力向上 (6)水泳指導者の役割

 (1)指導者養成事業 

 数多い日本のスポーツ団体で指導者養成にいち早く取り組んだのは、日本スキー連盟と日本水泳連盟である。この二つの連盟での指導者養成は第二次世界大戦以前の昭和初期から始められている。日本水泳連盟での指導者は、2種指導員、1種指導員の2種類であり、上級指導員の資格が加えられたのはずっと後になってのことである。

 時が過ぎ日本の社会は大きな変化を遂げた。科学技術の進歩、生活のしくみの変容、自動車の普及などにより、人間の生活は楽になったが、その反面、体力の低下、人間関係の疎遠、ストレスの増加といった現代社会の問題点が大きくクローズアップされた。

 そこで、国民の心身の発達と明るく豊かな生活に寄与することをねらいとして、スポーツ振興法が施行されたのが昭和36年のことである。

 スポーツ活動を普及し発展させるためには、施設もさることながら指導者の養成が重要であることから、旧文部省、日本体育協会とが中心となり、各スポーツ団体の指導者養成事業が推進され、同時に各スポーツ団体が独自に行っていた指導者養成事業の内容、資格の統一がはかられた。C級、B級、A級と改正され、名称もスポーツ指導員C級(水泳)というように変更された。

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 (2)本県の指導者養成 

  旧資格の2種指導員の養成を始めたのは昭和42年からのことである。現在とは異なり、指導者委員会という組織はなく、故 木村 喜一郎氏と筆者の2名の細々とした人員で、講習、検定を実施した。したがって、講義、実技とも二人で担当する訳で、その準備、実施、整理の仕事は大変の一語に尽きた。見るに見かねて桑原 圭司氏が加わり、回数を重ねるに従い、一人二人と講師陣の人数も増し、指導者委員会の組織も確立され、今では他の府県に比べて最高のスタッフにより指導者養成が実施されているという誇りがある。

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 (3)本県の水泳指導者数 

  ここに掲げる数値は平成12年度までの登録者数であり、平成13年度に合格された方々は含まれていない。
 新潟市:178 / 長岡市:68 / 上越市:66 / 柏崎市:26 / 南魚:21 / 新井市:15 / 十日町市:14 / 佐渡:12 / 三条:9 / 糸魚川市:8 / 新津市:8 / その他:75 / 合計:504
 参考として全国の上位8位までを挙げる。
 東京:2,814 / 北海道:1,438 / 愛知:937 / 神奈川:892 / 埼玉:861 / 兵庫:672 / 静岡:671 / 新潟:504

 指導者の数値は各水泳連盟の関係者の指導者養成にかける熱意の程度の表れと見ることができる。また、国民体育大会における上位県と指導者数との関連も明確に理解される。

 さらに、全国都道府県の中で本県の人口は第14位であり、人口比率から見ると本県の指導者数は誇り得る数値であり、指導者委員会委員各位の汗と努力の結晶といえよう。

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 (4)指導者の利用と活用 

  現在国民体育大会の監督、コーチは日本体育協会のコーチ、指導者の資格を所有していない者はその任につかせないとする方針で臨んでいる都道府県が全国の三分の二以上を占めている。

 各都道府県体育協会の主催、共催を問わず実施している水泳関連の事業については、

 飛込も昭和37年から小田敏彰(日体大)を指導者として招き強化がなされた。南波克憲(長岡商)が39、40年に日本高校で入賞し、その後、吉原直樹(長岡商)、伊藤正明(長岡商―日体大)へと引き継がれた。伊藤もモスクワオリンピック代表選手に選ばれた。現在も小田の教え子の塚田貴則、小林 均が中心となり指導が続けられている。

 水球は、当時はまだ東京教育大の学生であった内田 力が柏崎高校の指導にあたった。ゼロから出発した柏崎高校の水球を全国のトップレベルまで引き上げた内田の指導は瞠目すべきものがあった。国体中止の無念さは日本高校の2連覇で晴らしたのをはじめ数多くの名選手を育成した。矢島秀三(柏崎高―日大)はメキシコ・ミュンヘンの両オリンピックに日本代表選手として出場した。その後、水球は柏崎に定着し、滋賀国体では3位になっている。

 昭和45年、県水泳協会は低迷を脱すべく、規約の改正と役員の刷新を行った。強化も新潟国体前の原点に戻し、指導者の指導力の強化とジュニアの強化を重点事業とした。

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 (5)指導者と競技力向上 

  競技力向上は指導者の資質によってその結果が決まる。特に水泳の場合、抵抗を利用しいかに強い推進力を生みだすか、そして進む力を妨げる抵抗をいかに少なくするかが重要な課題である。すなわち、合理的、効率的な泳ぎをどのように形成するかが重要な課題なのである。良いフォームを形成しない限り、筋力強化、心肺機能の向上を図っても記録は決して良くはならない。良いフォームづくりは、水慣れ、初歩の泳ぎの習得段階にあり、この段階での指導こそ競技力向上の鍵を握るものといっても過言ではない。

 故に、競技力の向上を期するには、初心者の指導には経験豊かな優れた指導者を充てることが重要となる。

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 (6)水泳指導者の役割 

 (1) 常に対象者の健康に留意しよう!

 健康の保持増進には水泳は最適とされるが、一歩誤れば死につながる。したがって、対象者の顔色、目付き、表情、動作などから疲労や異常を発見する能力こそ、水泳指導者の基本的能力である。
 前回と今回、他人と比較して生理的状態を知る努力を怠ってはいけない。

 (2) 対象者の心を読みとろう!

 水泳をやろうとする人々にはいろいろな存在がある。健康の維持増進、泳力の向上、身体のリハビリ、リクリエーションを求めてなどさまざまである。それらの目的に応じた指導でないと対象者は満足しない。
 また、対象者が練習に満足しているかどうか、満足していない状態では練習の成果はあがらない。
 さらには、対象者の性格を知る努力も大切である。動作、会話などにより性格を把握してそれに応じた指導の展開はきわめて重要である。アメリカ、豪州の競泳のコーチはその面では心理学者のように対象者の心を読む能力に長けているといえる。

 (3) 未来を予測しながら指導しよう!

 練習の成果は人それぞれによって異なる。過去の運動経験、能力、性格、体力によって練習の成果は全く異なるのは当然である。その個人の能力によって指導の内容、ステップは違わねばならないし、その対象者に応じた未来像を描きながら、あせらず指導したいものである。

 (4) 魅力ある人間像を目指そう!

 指導者の言語、表情、動作は、対象者の練習意欲、練習効果に大きな影響を与える。言語の強弱、ゆっくり簡潔な説明、明るく表情豊かな接し方、一人一人を丁寧に扱う誠実さ、子供であっても親切に対応する人柄、対象者に心温かき指導者の印象を持たれる指導者を目指したいものである。

 (5) 水泳指導者としての専門家たれ!

(以下、「続・水泳の指導者」に続く)

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